昨年の干ばつからの復活劇~ノバスコシア州のワイルドブルーベリー生産量は回復へ

2025年産が干ばつの直撃を受けたノバスコシア州のワイルドブルーベリー。それだけに、今シーズンの回復ぶりは産地にとって大きな安堵となっています。同州のワイルドブルーベリー生産者協会(Wild Blueberry Producers Association of Nova Scotia)でエグゼクティブ・ディレクターを務めるジャネット・マクドナルド氏は、「今年はおかげさまで、状況がずっと良い」と手応えを語ります。生育期は総じて順調で、実の付きも肥大も良好。産地には昨年とは対照的な、前向きなムードが戻ってきました。

受粉期は「例年より長く」——懸念を越えて良好な実付きに

今年の作柄を特徴づけたのが、例年より長引いた受粉期でした。マクドナルド氏によれば、受粉は5月中旬から下旬にかけて始まり、6月に入っても続いたといいます。受粉期間が延びると、着果や実の生育にどう影響するかが読みにくくなります。当初、生産者の間ではこの点への懸念があったものの、結果として生産は順調に進み、粒の大きさもそろった良質な実に仕上がりました。

品質を後押ししたのは十分な降雨です。ノバスコシア州のワイルドブルーベリー畑の多くは急な斜面や丘陵地に開かれており、そもそも灌漑に適しません。水を引くためのため池へのアクセスも限られるため、生育を天候に委ねる度合いが高い産地です。それだけに、今年の適度な雨は作柄を大きく左右する好材料となりました。

5月中旬〜6月
受粉期。例年より長く続き、当初は着果への懸念材料に。結果は良好な実付きに着地。
良好
収量・品質ともに良好。粒ぞろいのよい、サイズの大きな実が確保できた。

大西洋沿岸4州がそろって好天——生産は「業界平均」の見通し

好調はノバスコシア州にとどまりません。マクドナルド氏は、隣接するニューブランズウィック州、ケベック州、プリンスエドワードアイランド州でも天候に恵まれ、畑の作柄は良好だと見ています。産地全体としては、今年の生産量は業界平均の範囲に収まるとの見通しです。カナダ大西洋沿岸の主要4産地が足並みをそろえて回復に向かう構図は、供給を安定させたい買い手にとっても心強い材料といえます。

大西洋沿岸の主要4産地・作柄の見通し(2026年産)
産地天候・作柄状況
ノバスコシア州 良好な生育期・十分な降雨 回復・一部に干ばつ影響
ニューブランズウィック州 好天・良好な作柄 良好
ケベック州 好天・良好な作柄 良好
プリンスエドワードアイランド州 好天・良好な作柄 良好

※ ノバスコシア州以外の作柄は、同協会が周辺産地の状況として示した見立てに基づく。産地全体の生産量は「平均並み」の見通し。

それでも残る干ばつの爪痕

回復基調とはいえ、地域全体が一様に立ち直ったわけではありません。産地の一部には、昨年の干ばつの影響で開花や着果がほとんど得られなかった区画が残っています。

現場の声

「残念ながら、花も実もほとんど付かなかった区画がいくつかあります。そうした株が再び生産力を取り戻すには、もう少し時間が必要です。今年の雨が、回復に十分な量であってほしいと願っています」——ジャネット・マクドナルド氏

干ばつで弱った株の回復は一年では完結せず、複数年にわたる天候次第という側面があります。産地の「平均」が戻っても、その内実にはばらつきが残る——供給を読む上で押さえておきたいポイントです。

収穫は年々前倒しに——気候変動が変える収穫カレンダー

今シーズンは収穫の立ち上がりもやや早く、生産者は7月の末から8月初めにかけて収穫を開始しました。作付面積の大きい生産者ほど早めに刈り取りを始め、9月上旬に終わるワイルドブルーベリーの収穫期内に作業を収めようとします。そして州の生産者たちは近年、収穫シーズンの始まりが毎年少しずつ前倒しになっていることを実感しています。

5月中旬〜6月
受粉期(今年は長め)
7月末〜8月初
収穫開始(年々前倒し傾向)
9月上旬
収穫期の終了

世界の需要は堅調、価格も強含み

需要面に目を向けると、ワイルドブルーベリーは世界的に堅調です。生鮮のまま販売されるのはごくわずかで、全体の約5%にとどまります。残る約95%は冷凍在庫として保管され、一年を通じて出荷されていきます。この「大半が冷凍で通年供給される」構造こそ、ワイルドブルーベリーが加工原料・業務用途で安定調達しやすい理由でもあります。

約5%
生鮮出荷の比率。フレッシュ流通はごく一部にとどまる。
約95%
冷凍在庫として保管され、通年で市場に供給される。

価格も世界的に強含みで推移しており、マクドナルド氏は「この流れが年間を通じて続くことを期待している」と話します。現時点の価格は前年と同水準。年内に生産者への追加支払い(トップアップ)が発生する可能性はあるものの、滑り出しは上々で、業界からは前向きな声が多く聞かれるといいます。需要が堅調である限り、価格もそれを反映するとの見立てです。

「今年は乗り切れた。だが、その先が問われている」

干ばつ、そして年々早まる収穫。ノバスコシア州の生産者にとって、気候の問題はいまや作柄を語るうえで避けて通れないテーマになっています。

今シーズンは何とか乗り切れました。けれど先を見据えれば、産業としての持続可能性を確保し、目の前にある需要に見合うだけの作物を確保できるかどうか——そこが問われています。

ジャネット・マクドナルド氏/ノバスコシア州ワイルドブルーベリー生産者協会 エグゼクティブ・ディレクター

回復した一年の裏側で、生産者が見つめているのは需要と供給の長期的なバランスです。強い需要に応え続けられる産地であるために——気候変動への適応は、ワイルドブルーベリー調達の未来を左右する論点として、これからも重みを増していきそうです。