気候変動が揺さぶるメイン州のワイルドブルーベリー

ロブスターと並ぶメイン州の象徴であるワイルドブルーベリー。だが猛暑と干ばつが植物を痛めつけ、収量の減少とマルチや灌漑のコスト増のはざまで、多くの小規模農家が苦境に立たされている。

2025年は大規模な干ばつに襲われた

ワイルドブルーベリーは北米大陸の北東部ーアメリカ・メイン州、カナダ・ケベック州、ノバスコシア州、ニューブランズウィック州、プリンスエドワード島が主要な生産エリアです。この地域に限定した話ではありませんが、近年異常気象が毎年のように発生し、地域の農作物に多大な影響を及ぼしています。

2025年、メイン州の大半を深刻な干ばつが襲いました。あるワイルドブルーベリー農園では果実が熟す前に葉の色が赤く色を変え、果実が萎んでしまいました。結局この農園では例年に比べ1 / 10程度の収穫量となりました。この農園では過去7年の間に3回ほど異常気象を要因とした大規模な不作に見舞われました。

メイン州全体を見ても多くの農家が収穫の3分の1から半分を失いました。農作物保険に加入していた場合でも補償額は過去数年の収量に基づいて計算されるため、数年不作が続くと保険で賄われる補償額も低くなってしまいます。

ワイルドルーベリーの2025年州別生産量

メイン州を象徴する果実

ワイルドブルーベリーはロブスターロールやウーピーパイと同じく、メイン州を代表する食べものです。しかし、スーパーでパイント単位で売られている果実とは別物です。ワイルド種は栽培種より粒が小さく、風味が濃いのが特徴です。生で売られるより、選別・冷凍されて流通するのが一般的です。

メイン州では2025年に2万6千トンのワイルドブルーベリーが収穫され、金額にして4,000万ドルの生産額となっています。

北米でも数少ない自生の果実であるワイルドブルーベリーの群落は、現在その果実を収穫している農場よりも遥かに長く、同じ場所に存在してきたことが多いです。1本の株は1年おきにしか実をつけないため、農家はふつう、ある年に作付面積の約半分を収穫します。「ローブッシュ(低木性)」とも呼ばれるこの植物は、砂質や砂礫質、その他やせた土壌の上に密なマット状に広がって育ち、主に北米東部のカナダとニューイングランド地方に分布しています。

これらの土地は栄養豊富では無く、他の作物がほとんど育ちません。ワイルドブルーベリーは酸性で栄養分があまり無いこのような土壌に適応して野生状態で生育しています。

ワイルドブルーベリー生育風景

丈夫な作物でありながら、ワイルドブルーベリー農場は近年の気温と降水の極端な変動に対応しきれずにいます。それが業界全体を不安にさせる大きな要因となっています。

季節が乱れる

メイン州のワイルドブルーベリーは、気候のホットスポットのただ中にある。一因は、メイン湾の急速な温暖化だ、とシャットマン氏は言う。2021年の研究によれば、州のブルーベリーの荒野(バレン)は、特に沿岸部に近いほど、州の他の地域より速く温暖化しています。

その結果、実は早く熟すようになり、農家が気づかぬうちに収穫の一部を逃してしまうことがあります。かつて収穫は8月の上旬から中旬が通例でしたが、いまは7月下旬にはほとんどの実が熟す農園もでてきています。

メイン州は2020年、2022年、2025年に深刻な干ばつに見舞われ、一方で2023年は記録的な多雨の年のひとつでした。過湿はブルーベリー畑の病害と雑草を招く。逆に干ばつは、形成される花の数を減らし、果実をしぼませます。晩春の不意の霜が、形成され始めたばかりの花芽を枯らすこともあります。

しかもワイルドブルーベリーは1年おきにしか結実しないため、極端な気象は複数のシーズンに影響を及ぼします。干ばつの年は当然その年の果実の大きさに響きますが、もう半分のまだ栄養成長中の株にも影響するからです。

損失の連鎖

このように生産量・収益が安定しない状況が今後も見込まれると農家の生産意欲が減退します。また安定した生産を行うために灌漑設備などの投資が必要になってきており、財務面で大きな負担を生んでいます。冷凍ワイルドブルーベリーメーカーで大規模なメーカーでさえ農園を売却する計画を打ち出すなど、価格高騰により増えてきた作付面積が減少転じました。

未来に備える

冷凍ワイルドブルーベリーメーカーのワイマンズの研究チームは気温・降雨・灌漑が——土壌の健全性から受粉まで——生育条件と収量にどう影響するかを調べる4年間の研究の折り返し地点にいます。極端に湿った状態、極端に乾いた状態、変動の激しい状態に植物がどう耐えるかを検証しています。

畑では、灌漑設備のある区画、水分の蒸発を遅らせるマルチを施した区画、どちらもない区画と、さまざまな条件でワイルドブルーベリーが育てられるなど、様々な条件でワイルドブルーベリーを育て膨大なデータを集積しています。

これまでの研究により、灌漑、そして程度は劣るがマルチングは、すでに干ばつ被害を抑える有望さを見せています。マルチの被覆は土壌温度を下げ、病害リスクを抑え、雑草の生育を遅らせる効果がありますが、2025年に起こったような干ばつの被害を防ぐには十分ではありません。

最も効果的なのは灌漑ですが、ワイルドブルーベリーが好む土壌は井戸を掘ったり配管を敷いたりするのに向かないことが多く、また小規模生産者の多くは灌漑設備を持たず干ばつに対して無防備なままです。USDA傘下の自然資源保全局(NRCS)が灌漑費用の一部を補助していますが、NRCSは現政権の発足以降のUSDA予算削減で資金とスタッフの約4分の1(2,000人超)を失いました。メイン州も、25〜45のワイルドブルーベリー農場に水管理の手法を届けるはずだったパイロット事業向けの1,550万ドルを、連邦助成金の撤回によって失いました。

さらに肥料・労働・機材のコストも上昇を続けており、農家が得る1キロ当たりの収益は数年前と比較すると半分程度まで落ち込んでいます。

参考資料:Wild Blueberry Farms Across Maine Suffer as Climate Change Upends Growing Seasons / Incide Climate News - 2026/5/11記事