回復の年、それでも在庫は薄いまま—2026年ワイルドブルーベリーの収穫を読む—

ケベック州は史上最大の収穫が見込まれ、沿海州とメイン州も干ばつに苦しんだ2025年から持ち直しました。それでも市場の需給は引き締まったまま。仕入先Fruit d’Or社の最新レポートを、現地の業界団体や報道で裏付けながら整理します。

ケベック州 2026年 ワイルドブルーベリー収穫量(業界団体の初期推定)

約1億2,500万ポンド

約5万6,700トン。2016年の過去最高を上回り、前年比でおよそ3割増の見込みです。[2]

単位:ポンド。2025年・5年平均は地元紙Ma Côte-Nord[3]、2016年・2026年はLes Affaires[2]による。2026年は初期推定値で、確定値ではありません。

カナダのワイルドブルーベリー大手で、当社の仕入先でもあるFruit d’Or社が10月、2026年の作況レポートを公表しました。要旨は明快です。北米の主要産地はおおむね良好な天候に恵まれ、収量・品質ともに前年を上回った。ただし在庫は依然として限られ、需給のバランスには慎重な供給管理が必要——というものです。[1]

本記事では、このレポートの内容を産地ごとに現地の公開情報と突き合わせ、026/27年の調達を考えるうえで押さえておきたいポイントをまとめました。

ケベック州(サグネ=ラック・サン・ジャン地域)

約1億1,400万ポンド

2005年の地域記録1億600万ポンドを大きく更新。[2]

地域記録を更新

メイン州(2025年実績)

約5,490万ポンド

10年平均7,920万ポンドを31%下回った前年。2026年は改善も、平年水準には届かない見通し。[1][7]

10年平均比 −31%

ノバスコシア州(2025年実績)

約55%減

干ばつで実が萎れ、収穫不能の畑が続出。2026年は前年を上回る収穫に。[1][4]

2026年は前年比増

北米市場全体

在庫は 引き続きタイト

2025年からの持ち越しはほぼなく、2026/27年の契約価格は堅調との見方。[1][9][11]

需給は引き締まり

前提:2025年はどれほど厳しかったのか

2026年の「回復」を正しく読むには、まず前年の落ち込みを確認しておく必要があります。2025年は北米のワイルドブルーベリー産地の多くが、夏の高温と長引く干ばつに見舞われました。

ノバスコシア州では、生産者団体(WBPANS)によると収穫量が約55%減少しました。雨不足で実が萎れて早期に落ち、多くの畑が収穫不能になったといいます。[4] 隣のニューブランズウィック州では、業界団体Bleuets NB Blueberriesの責任者が、収穫量は約2,000万ポンドと、年平均の6,800万ポンドから約7割減ったと述べています。山火事対策として州有地への立ち入りが一時制限され、収穫作業そのものも遅れました。[5]

米国の生産をほぼ一手に担うメイン州も例外ではありません。2025年の収穫量は約5,490万ポンドで、10年平均の7,920万ポンドを31%下回りました。[7] 春の受粉期の長雨と、収穫期に急速に進んだ干ばつが重なり、メイン州ワイルドブルーベリー委員会は気象による経済損失を2,800万ドルと見積もっています。[6]

産地別に見る2026年の作柄

Fruit d’Or社のレポートが示す各産地の評価と、それを裏付ける現地情報を一覧にしました。

産地Fruit d’Or社の評価現地情報による裏付け前年比
ケベック州 冬の積雪が休眠期の株を保護。一部で生育開始が遅れたが、夏の天候に恵まれ前年超え 州全体で約1億2,500万ポンドと過去最高の初期推定。夏の市場レポートでは開花の1〜1.5週間遅れも報告[2][9] 増加・過去最高
ノバスコシア州 局地的な干ばつや降水のばらつきはあったが、生育はおおむね順調。前年より収穫量増 開花期に2度の霜害。その後7月の降雨で作柄が大きく改善[8] 増加
ニューブランズウィック州 ノバスコシア州と並び、前年より収穫量増 2026年の数量は未公表。前年の干ばつによる株のストレスが残るとの指摘も[9] 増加
メイン州 天候が着果・成熟を後押しし収量は改善。ただし平年水準には届かない見通し 大手生産者は前年比5割増と報告。州全体の公式推計は来年1月以降[6][10] 改善も平年未満

プリンスエドワードアイランド州については、Fruit d’Or社のレポート・公開情報ともに2026年の具体的な数値は確認できませんでした。

ケベック州:好条件と産地の成熟が重なった記録的な年

Fruit d’Or社は、冬の積雪が休眠中の株を守り、十分な雨と適温が生育を支えたと説明しています。[1] 現地の報道もこれを裏付けます。ケベック州ワイルドブルーベリー生産者協会によると、主産地サグネ=ラック・サン・ジャン地域(オート・モーリシーを含む)の収穫量は約1億1,400万ポンドで、2005年の地域記録1億600万ポンドを大きく上回りました。州全体では約1億2,500万ポンドと、2016年の過去最高1億1,600万ポンドを超える見込みです。[2]

同協会は、天候に加えて栽培面積の拡大と、畑の成熟に伴う収量の向上を記録の要因に挙げています。[2] 収穫前の7月末には、地元の業界団体が「目立った干ばつがなく、収穫直前の雨で粒も大きく育つ」と、量・質ともに良好な見通しを示していました。[3]

一方、Fruit d’Or社が触れた「一部地域での生育開始の遅れ」については、夏の市場レポートで開花が平年より1〜1.5週間遅れていたと報告されています。[9] 結果的には、夏の好天がこの遅れを取り戻した形です。

沿海州:霜害を越えて持ち直す

ノバスコシア州の2026年は、平坦な道のりではありませんでした。州の専門アドバイザーによる生産者向けブログでは、5月下旬から6月初めにかけて2度の大きな霜害が報告されています。[8] 業界紙も、開花期の霜で花が傷み、一部地域で収量の可能性が下がったと伝えていました。[13]

流れを変えたのは7月の雨です。同ブログの7月版ニュースレターは、月後半のまとまった降雨と温暖な気温により、州内の多くの地域で作柄が大きく改善したとしています。[8] Fruit d’Or社の「局地的な干ばつや降水のばらつきはあったが、生育はおおむね順調だった」という評価と一致する内容です。ただし9月上旬時点でケープブレトン島や州東部ではまだ収穫が続いており、9月初めの連休中の雨と強風が未収穫の畑に影響したとの報告もあります。[8]

ニューブランズウィック州については、2026年の州全体の数量を示す公開情報は見つかりませんでした。夏の時点では、前年の干ばつによる株のストレスや畑の損傷が残る可能性が指摘されていました。[9] 前年比で増加したという点は、Fruit d’Or社のレポートに基づくものです。

メイン州:改善、しかし構造的な課題は残る

メイン州について、Fruit d’Or社は「収量は改善したが、平年水準には届かない見通し」と慎重な評価を示しています。[1] 現地の声もおおむね同じ方向を向いています。ブルーヒル半島の大手生産者W.R. Allen社は、収穫量が前年より5割多く、1エーカーあたり6,000ポンドに達した畑もあったと地元紙に語りました。[10] 一方、8月上旬の別の報道では、豊作は期待していないものの「もっと悪くなり得た」とする生産者の声が紹介されています。[6]

州全体の数量はまだ公表されておらず、メイン州ワイルドブルーベリー委員会によれば、税務データがそろう来年1月まで全体像はわからないとのことです。[6] なお前述のW.R. Allen社は、州全体で7,000万ポンド前後になると予想しています。[10]※ これが当たれば前年から大きく回復する一方で、10年平均の7,920万ポンドには届かず、Fruit d’Or社の見立てと整合します。

メイン州には中長期的な課題もあります。委員会の証言によると、2020年以降、栽培面積は年約8%のペースで減少しています。[14] 生産コストの上昇と生産者価格の低迷が重なり、畑を手放す動きも出ています。2026年の回復は朗報ですが、産地の供給力そのものが細りつつある点は、長期的な調達計画で意識しておきたいところです。

「収穫は増えた。しかし前年の不足を埋めるには足りない。」…2026年のワイルドブルーベリー市場は、その一言に集約されます。

市場動向:豊作でも在庫が積み上がらない理由

Fruit d’Or社がレポートで最も強調しているのは、収穫の回復にもかかわらず在庫が比較的限られているという点です。[1] 背景には、2025年の不作で在庫がほぼ底をついた状態から2026年シーズンを迎えたことがあります。

北米の食品原料サプライヤーBMT Foods社は夏の時点で、2026年への持ち越し在庫はほとんどなく、業界在庫は歴史的な低水準にあると指摘していました。[9] 英国の食品原料商社Chelmer Foods社も4月の市況レポートで、カナダ産ワイルドブルーベリーの供給は2026年も引き締まり、冷凍在庫は減少傾向、価格は2026/27年の契約シーズンまで堅調に推移するとの生産者・加工業者の見方を伝えています。[11]

9月には、市場調査会社Expanaの情報として、ワイルドブルーベリーは特に小粒サイズの供給が限られ、有機IQFブルーベリーやブルーベリーピューレも品薄だと報じられました。[12]

ケベック州の記録的な収穫が市場を緩めるかといえば、そう単純ではありません。ケベック州の生産者協会は、需要が伸び続けていること、そして北米全体では例外的な豊作ではなく、他のカナダの州は平年並みかやや下回る水準にとどまっていることから、供給過剰のリスクは小さいとの見方を示しています。[2]

PDX TRADINGの見解

  • 数量は確保しやすくなるが、価格の大幅な軟化は期待しにくい。2026年産の増収は、主に2025年の欠損を埋める方向に働くと考えられます。
  • 規格によって需給に差がある。小粒サイズや有機、ピューレなどの加工品は、特に引き締まった状態が続いているとの情報があります。
  • 来年の作柄も天候次第。ワイルドブルーベリーは2年周期で栽培され、晩夏から秋の水分状態が翌年の花芽形成を左右します。[10] 早めの数量相談をおすすめします。

まとめ

2026年の北米ワイルドブルーベリーは、ケベック州の記録的な豊作を筆頭に、沿海州・メイン州でも前年から収穫が回復しました。現地の業界団体や報道は、Fruit d’Or社の作況評価をおおむね裏付けています。一方で、2025年の大幅減産で失われた在庫はまだ戻りきっておらず、市場は引き続き慎重な供給管理を必要とする局面にあります。

PDX TRADINGでは、Fruit d’Or社をはじめとする北米の産地から、冷凍・乾燥ワイルドブルーベリーや果汁、ピューレなどの原料をお届けしています。2026年産の規格・数量・納期について、どうぞお気軽にご相談ください。

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出典

  1. Fruit d’Or「2026 Wild Blueberry Crop Report」(2026年10月)
    fruitdor.ca/en/blog/wildblueberrycropreport_october2026/
  2. Les Affaires「Le Saguenay–Lac-Saint-Jean et la Haute-Mauricie pulvérisent leur record de production de bleuets」(2026年10月25日)
    lesaffaires.com
  3. Ma Côte-Nord「Une belle saison se dessine pour le bleuet sauvage」(2026年7月30日)
    macotenord.com
  4. FreshFruitPortal.com「Nova Scotia wild blueberry harvest plunges 55% after devastating 2025 drought」(2026年1月8日)
    freshfruitportal.com
  5. CBC News「Wild blueberry crop in Maritimes has taken a hit from prolonged drought」(2025年9月)
    cbc.ca
  6. Bangor Daily News「Maine blueberry farmers hopeful for 2026 after ‘devastating’ losses last year」(2026年8月5日)
    bangordailynews.com
  7. Central Maine(Wild Blueberry Commission of Maineの推計を引用)
    centralmaine.com
  8. Nova Scotia Lowbush Blueberry Blog(2026年6月〜9月の各記事)
    novascotiawildblueberryblog.com
  9. BMT Foods「Wild Blueberries: Summer 2026 Overview and Crop Update」(2026年夏)
    bmtfoods.com
  10. The Rising Tide「Blueberry grower optimistic that 2026 harvest will top last year’s yield」(2026年8月)
    risingtide.media
  11. Chelmer Foods「Blueberry Market Update 16.04.26」(2026年4月16日)
    chelmerfoods.com
  12. FreshPlaza「IQF blueberry market tightens on limited processing supply」(2026年9月)
    freshplaza.com
  13. FreshPlaza「Drought and frost affect Canada’s 2026 blueberry outlook」(2026年7月)
    freshplaza.com
  14. FreshPlaza「Maine wild blueberry fields listed for sale as industry pressures persist」(2026年6月)
    freshplaza.com

※ メイン州の「7,000万ポンド前後」は一生産者(W.R. Allen社)による予想であり、公式推計ではありません。

トン換算は1ポンド=0.4536kgで計算し、概数で表記しています。ケベック州の2026年数量は業界団体による初期推定で、今後修正される可能性があります。