フリーズドライ食品の吸湿と賞味期限

フリーズドライ食品の特徴と品質の劣化

フリーズドライ食品の品質を劣化させる2大要因~吸湿と酸化~

フリーズドライとは気圧が下がると水の沸点が下がる性質を利用して、極低温・極低圧で凍った状態で氷自体が蒸発する「昇華」と呼ばれる現象を利用して、食品中の氷を、液体の水に変えることなく氷のまま水分を除去することで食品を乾燥する技術です。水は地上では100℃で沸騰しますが、気圧の低い山頂などでは水の沸騰する温度(沸点)が下がります。富士山山頂では約87℃で、エベレスト山頂では71℃程度になります。さらに高度を上げ7万5千メートル程度の中間圏と呼ばれるほぼ宇宙空間では水の沸点は-30℃程度となります。その状態では氷は溶けて水になることができず、氷を熱などのエネルギーを加えて暖めると氷が直接水蒸気に変わります。この現象を「昇華」と呼びます。二酸化炭素を凍らせたドライアイスが固体のまま煙となる現象も同じく昇華現象です。詳しくは弊社サイト「フリーズドライについて」をご覧下さい。

フリーズドライで乾燥された食品では、食品の中で氷があった場所が空洞となるため、お湯や水で素早く戻る食品となります。一方、空洞ができるため、食品の表面積がその分大きくなり、酸化や吸湿が早く進みます。

 

もし食品をフリーズドライした直後に、酸素も水分も無く、15℃程度の一定の温度の環境で保管すると、半永久的に品質が劣化しないと考えられます。すなわち、フリーズドライ食品の品質を劣化させる大きな要因は

  • 水分:吸湿により微生物が増殖する、食感などが劣化する、加水分解などで科学的な変化が起こる
  • 酸素:酸化により栄養成分、色、風香味が変化する、成分が酸化により別の物質となり場合によっては健康に害をもたらす

の2つに絞られてきます。

水の沸点と気圧の関係

食品の中で人にとって有害な微生物が増殖することを腐敗といいます(逆に人にとって有益な微生物が増殖することを発酵と呼びます)。微生物が活動するためには、栄養と水が不可欠です。ただ、食品の中の水には2種類あって、食品とあまり強く結合しておらず食品の中で比較的自由に動くことができ微生物が利用できる水分(自由水)と、食品の成分と強く結合していて、自由に動いたり微生物が利用したりできない水分(結合水)に分かれています。ですから「食品中の水分」=「自由水」+「結合水」となります。

食品の中に含まれる自由水の割合を「水分活性値(Water Activity) : 記号Aw」という値で表し、食品の中の水分全てが自由水の場合1.0に、逆に全く自由水が無い場合0.0となります。一般的に知られている水分と相関関係はあまりなく、水分が高いにもかかわらず水分活性が低い食品や、逆に水分が低いのに水分活性が高い食品もあります。

「水分活性が高い=微生物が自由に利用できる自由水が多い」ことから、水分活性値が低いほど、微生物が増殖しにくくなります。下図に代表的な食品とその水分活性値、また水分活性値と増殖できる微生物についてまとめました。

水分と水分活性~微生物の増殖との関係

フリーズドライ長期保存食品では賞味期限設定に微生物検査は必要ない?

レトルトなど殺菌食品とフリーズドライ~賞味期限と微生物のリスク

一般に食品の水分活性を下げるためには、

  • 乾燥して自由水の量を減らす
  • 糖漬や塩漬などにより自由水を結合水に変える

方法があります。いずれも食品に科学が持ち込まれる遙か古代から、人類が食品を保存するために行ってきた方法です。ただ糖漬けなどでは水分活性値0.6程度、通常の乾燥では0.55程度までしか下げることができません。

食品をフリーズドライすると微生物が増殖できない低水分活性(0.4以下)となり、その後の吸湿を防ぐことができれば微生物の増殖による腐敗のリスクをほぼなくすことが可能となります。そのためサバイバルフーズ・マウンテンハウス製品では微生物を指標とした賞味期限の設定はしておりません(原料受入時や製品製造時の品質検査などでは品質管理・製造管理の目的で微生物基準を設け、検査・確認をしています)。

「水分活性の極めて低いフリーズドライされた素材」と「水分活性がフリーズドライ食品と比べて高い熱風乾燥などの乾燥原料・素材」を混合してできた食品では、「水分活性の高い素材」から「水分活性の低い素材」へ水分が移行し、食品全体としては水分活性が平衡化しますが、フリーズドライ素材は本来の状態から比べ吸湿することを意味しており、設定した賞味期限の間その品質を保つことができるよう慎重な商品設計が求められます。

缶詰やレトルトパウチ(容器包装詰加圧加熱殺菌食品~内容物のpHが4.6を超え、かつ水分活性が0.94を超える食品を缶詰やレトルトパウチにした食品)、最近では無菌包装や含気調理など密封して殺菌した食品なども賞味期限が長く、非常食として活躍しています。これらの食品とマウンテンハウス・サバイバルフーズの違いは何でしょうか?

どちらも「食品を保存に適した処理を施し」、「保存に適した包材に密封した」食品ですが、缶詰やレトルトパウチは、食中毒菌であるボツリヌス菌を殺菌するために120℃で4分相当以上の殺菌が行われています。ただこれによりボツリヌス菌が完全に死滅してゼロになるわけではなく、1/1012(1兆分の1)になるまで殺菌ができるということです。そのため、理論上は内容物の水分活性は高く、内容物に微生物が存在すれば増殖することが可能です。そのため高温・高圧条件で殺菌をして微生物による腐敗のリスクをできる限り抑制しているのが、缶詰やレトルトパウチ製品です。

一方、調理済み食品をフリーズドライしたマウンテンハウス・サバイバルフーズでは水分活性が低いので、内容物に微生物が存在していても、その微生物が増殖することができません。

包材とフリーズドライ食品の吸湿

長期間保管される非常食では包材がどの程度水分を通すかで、中身(食品)がどの程度吸湿して水分活性が上昇するかが決まります。マウンテンハウスパウチ製品とアメリカで販売されているその他のブランドの包材の水分を透過させる度合いの比較調査(弊社主体、分析は外部機関に委託)を行いました。包材が水分を通してしまう度合いはWVTR (Water Vapor Transmission Rate : 水蒸気透過度)という単位を用いて測定されます。マウンテンハウス製品のWVTRを基準として他のブランドの結果と比較すると、包材の性能に大きな差(2倍~1100倍)があることが分かりました。

これがどの程度の差かをわかりやすくするために、小さじ一杯(5g)の水分が1m2の包材を通過するのにどのくらいの時間がかかるかを計算しました。マウンテンハウスの包材では5gの水分が通過するのに25年かかりますが、その他のブランドの包材では10年から8日とかなり早い時間で水分が通過します。すなわち、包材の中の食品がより早く吸湿することになります。

オレゴンフリーズドライ社は包装資材が賞味期限に与える影響を非常に重要視しており、包装資材メーカーの開発に従事していた技術者がマウンテンハウスの包材設計、製造工程の開発と品質管理に携わっています。

酸化と賞味期限

FD食品は表面積が大きくなるため湯戻りが早いという利点と同時に酸化されやすくなります。そのため通常の食品とは異なる賞味期限の設定根拠と確認が求められます。

品質と安全性

pdx tradingが取扱う製品はFSSC認証などお客様の要望にお応えできる品質マネージメントを行っている委託工場で生産しています。

賞味期限とは

食品にはその性質によって賞味期限と消費期限のどちらかを表示することが義務づけられています。それら期限はどのようにして設定されているのでしょうか?

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